「社内向けポスターの日本語に対応するように英語を作ってみたんだけど、ニュアンスは伝わっているだろうか・・・チェックしてくれない?」
初めてそんな相談を受けました。
TOEICの点数がよくてもメリットは無い
昇進もなければ人事の高評価にもつながらない
僕はそんな環境にいますが(泣)、
こういう仕事には 僕の使い勝手がいいのか業務外の時間で試行錯誤。
どんな案ができあがったか 具体例を出すことはできないけれど
経験から得た学びを共有します。
作業中に身をもって実感したこと
1「英語のキャッチコピーをつくる」
2「日本語のキャッチコピーに合わせた英訳をつくる」
は全く別物。
3「ポスター」における制約
結構厳しいので 言葉を探し続ける作業の連続。
あ)デザインがすでにある状況では
「デザインに合わせた訳をつくる」ことが必要。
い)改行場所と幅の問題、配置(寄せ方)
デザイン的な配慮(*) が必要です。そして
4 文法的に正しいが、文書では「不自然」な表現を使ってみたいものだ
..という製作者心理が働いてしまう。
辞書に新しい表現を加えてやる、みたいな。無難に自然な表現でまとめてみても インパクトに欠けるなら ポスターとしては失敗ですし。
(*) デザインを重視しすぎる例:意味不明な横文字の書かれたTシャツ
まず・・・
1「英語のキャッチコピーをつくる」
まっさらな状態で英語を書ける(難しいけど)
英語の語順で, 英語のノリを使って書ける(難しいけど)
例)JR西日本の上手いポスター。
主に海外旅行客向けの注意喚起なので英語主体のメッセージが押し出されている。
Danger! ←でかいフォント, 角度のある「!」
No selfie sticks ←14文字 + 2スペース
on the platform ←13文字 + 2スペース
うまいなぁ・・・
「!」に角度をつけることで 全体のフォルムが上底の長い台形になっている
語順:「危険! ダメ 自撮り棒 ホームで」
日本語主体で書くと次の語順になりますね。
「危険!ホームでの自撮り棒使用禁止」
この語順で英語に訳すと
Danger! On the platform, use of selfie sticks is prohibited.
テストでは○ですが ポスターでは×です。
それが「英語のノリ」「ニュアンス」と呼ばれるもの。
翻訳サイトの翻訳では出てこないもの。
2「日本語のキャッチコピーに合わせた英訳をつくる」
日本語に極力語順を合わせて書かなければ文意が伝わらない
英作文するときは日本語と語順が逆になります・・・そんな教科書的指導を受けるのが自然ですが, そんな中でも語順を合わせることが必要です。
例)語順をあわせるとはこんな感じ。(関係代名詞の英文和訳)
That's the bus (which) I wanted to take.
→あのバスやねん、乗りたかったやつ!
「私が乗りたかったのはあのバスです」
テストでは○だがニュアンスが伝わっていない。
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日本語のキャッチコピーが
言いたいことを、伝えたい順番で書かれている
そんなとき、普通に英語に訳すとニュアンスが崩れて当然
語順を調整する手法はふたつある。
・コロン・セミコロンの利用
強調点:詳細;
さらに詳細
例)やめましょう、歩きスマホ
STOP: Texting While Walking
・倒置法
強調点、S-V;
例)
Twisted by the Dark Side, young Skywalker has become.
参考)Star Wars のマスター・ヨーダが大好きな倒置法(強調点、S-V)
Best Master Yoda Quotes | Star Wars I-VI - YouTube
リンク切れ・・・ 興味のある方はYouTubeなどで探してみてください
強調点、V-S;
教科書的な倒置法はこっち。
例)Pink are the flowers.
(練習)ポスターに使う 次の文章を英訳しましょう。
*画像検索「歩きスマホ」の結果に出てくるものを題材にしてみました
この広告には
気づかなくても、
みんなの冷たい視線には
気づいてほしい。
危険です、歩きスマホ。
普通に訳せばこんな感じ:
You might be unaware of this message, but
We want you to be aware of how you are being seen.
No texting while walking.
ふつーにながい。
語順を大切にして訳すとこんな感じ:
This message might mean nothing to you; now,
Everybody's sight's being harsh to you.
No texting while walking.
(または)Do Not Text and Walk.
本来, sight は視界 なので視線とは別物
視線は正しくは "eyes"
・might meanと sight's being で韻を踏みたかった。
・語順(主語)は和文・英文共に同じ
・「歩きスマホ」はtexting while walking が暫定正式用語だが
text and walk
text-walking
wexting
などといった用語がではじめている。どれが定着するかな・・・
現行のtexting while walking は長いのできっと定着しません。
強引に韻を踏ませる、語感で印象づける
そんな目的で、「文法から逸脱する」「新しく言葉を作る」こともしばしばあるのでしょう。ここでeyesと訳せば eyes are beingとなって語感が損なわれます。
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いやー楽しいなポスターの英訳。
次に電車に乗るのが楽しみになってきた。
「町で写真を撮って、英訳するトレーニングをする」
これ楽しそうやね! ちょっとやってみよー!!
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