前回の記事の最後に用意した「学校教育はこの五段階欲求のステップのどこに属すのか」という問いについてはこのように答えを用意します。義務教育 = 生活のために必要な知識, 仕事をするためのベースと捉えると, 五段階のステップ1・2に入ると考えられます。これに対して高校・大学の教育は, より専門性を重視しているということから, ここに書くステップ5・6に属すのでは? と思っています。これらをみていきましょう。
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ステップ5 - 自己実現欲求
そして5段階目, ピラミッドの頂点にあるのが「自己実現欲求」です。
Morality: 道徳性とか倫理性とか訳されますが, 「徳」という言葉に集約されます。アメリカの文化であれば, 「たくさんの寄付ができている」状態もこれに入るのかもしれません。Lack of Prejudice (先入観なく判断できる状態)やAcceptance of Facts (事実を受け入れられる状態)は「徳」が備わってこそできる考え方といえます。
Creativity: 想像力
Spontaneity: 自発性
Problem Solving: 課題解決
「大学受験」に代表される日本の公的な教育は, ステップ5, その中でも課題解決力だけを重視していることがわかります。学校によっては想像力・自発性を育むカリキュラムが組まれていることもあるでしょう。
ステップ1や2で求められる生活力, ステップ3で求められる対人能力や愛し・愛され方は学校で教えてくれるものではありません。ステップ4で求められる表現力・人の動かし方などは大学・大学院を含め, 学校によっては扱うところもあるように思います。
「徳」について: アメリカ人が読むのは聖書で, 日曜の教会で意見交換をすることで身につけているという印象です。日本人が徳を学べるのはどこでしょう? 学校や部活などがそれにあたるのかもしれません。大人になってからは, やはり本でしょうか・・・ということで, こちらをおすすめいたします:
A Compass to Fulfillment: Passion and Spirituality in Life and Business
- 作者: Kazuo Inamori
- 出版社/メーカー: McGraw-Hill Education
- 発売日: 2009/11/02
- メディア: ハードカバー
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日本語版は有名なこちらの本です。
ステップ5の英語とは・・?
これは人それぞれ!!と片付けてしまわざるをえません。「課題解決力」に至ってはそれぞれの職業で別のスキルセットが必要となり, ひとつひとつ僕が解説できるものではありません。
ご自身が大学で学ばれた「専門教育」がステップ5で要求されることを包含しているものと思います。その「道」で英語が必要な場合は, 英語で学ぶことが長い目で見て効率的だと考えます。
これからお子さんを大学へ行かせたい, という方はできるだけ英語で教えている学校を選ばれるとよいと思います。英語のレベルは学校によってまちまちですが・・・僕が通っていた大学は日本語で教えることが多かったですが, 専門用語を効果的に身につけるため, 教科書だけは英語でした。
話が多少それますが, アメリカの高校や大学に行きたい, という方も中にはいらっしゃるかもしれません。そういった方には, こちらの英語の本をおすすめします。給与の上昇に比して, 子どもの学費の上昇の仕方が半端なく高いのがアメリカです。かなり多くの人が奨学金 =学生ローンに苦しめられているという現状があり, 社会問題となっています。
Debt-Free Degree: The Step-by-Step Guide to Getting Your Kid Through College Without Student Loans
- 作者: Anthony Oneal
- 出版社/メーカー: Ramsey Pr
- 発売日: 2019/10/07
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ステップ6 - 自己超越 (欲求?)
6番目の欲求としてピラミッド外にあり, 上の絵には書かれていないものに Self-transcendence: 自己超越があります。自分で十分量の結果を出していてそれに満足しているのに, さらに何かを追い求める状態がそれにあたります。例えば
・ルービックキューブを6面完成させるためのタイムを自分の中で競っている状態
・フルマラソンを走る方が完走→サブ4.5(4時間半以内)→サブ4→サブ3.5と目標をあげていく状態
・TOEIC 990点(満点)を何回も連続で取ること, 英検1級を連続で合格することを目標に掲げる状態
などなど, 「誰得???」という言葉が口を衝いて出てくるような, マニアックな状態へ飛んでいきます。マニアックな方を対象に商売をする方もいらっしゃいますが, これを「ニッチ(niche)なビジネス」と表現したりします。
英語学習の中で優先度が低いもの。捨てるべきもの。
ここまで書いてきて, わかったことがあるかと思います。ステップ5は専門性を深める教育や, ご自身が学びたいことについて自分で追求していく状態。言い換えれば, ここの部分は自身が学びたい専門情報以外は優先度が低いと考えていいですが「教養」は多い方がいいので, 無視可能とはいいきれません。余している時間があるのであれば, 積極的に教養を身につけるのがいいかと思います。時間がなければ必要性を感じるまで放置するのが良いと思われます。
ステップ6はニッチすぎて不要な情報が多いです。例えば, 大学受験やTOEICの点数アップ方法は, その試験の目的を達成した瞬間に, 学んだことの大半を捨てるべきです。問題の選択肢の斬り方などは広いピラミッドを見つめると, あまりにも些細でどうでもいいからです。限られている時間やお金を有効に使うため, 「学ぶことを選ぶ」ことは大変重要だと考えます。
・小説家がより良い表現を求めたり
・字幕家が尺を効率的にし, シャレやギャグを強引に訳したり
・同時通訳者が絶妙なスピードで和英両方の言語を扱ったり
こういったことはそれを目指す人たちが学ぶ, 一定の英語を身につけた人たちの自己超越の世界です。字幕や同時通訳はかっこいいなぁ・・とは思うものの, それ専門のプロが, スーパーニッチな世界を目指す, 察するに人数の非常に少ない世界なのでしょう。映画をみにいくたびに, 毎回感動を覚えます。有名映画の字幕はいつもことごとくすごいです。
英語を使ってビジネスをする方には早いスピードで, かなりの文章を解釈する<高速読解>の能力が求められます。それはビジネスの世界で必要となる, ニッチではありながら磨き続けなければいけない能力です。
「高速でリスニングをすることが英語上達のカギだ」とする教材が世の中にはありますが, 優先順位としては高くはないのでは, と思います。人間離れしたスピードで言葉を話す人はなかなかいないからです。時間を有効に活用したいと考える人がオーディオブックを買い集めて高速リスニングをする・高速リスニングによって頭の処理スピードを上げたいといった需要にはあうのかもしれません。
次の記事ではまとめとして, ステップ1-6を通じて, 学ぶべきポイント: 青字だけを抜き出し, 必要なこと・重視すべきことは何か, 不要なこと・無視すべきことは何かを明確にします。
ここまで読んで, ほほう・・と思っていただいた方, ぜひ読者になってください!
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