学校で習う長文読解ってなんのためにあるんでしょうね・・・?
目的のひとつは間違いなく社会人になってからの「契約書の読解」のためにあります。主語と述語がいったいどこにあるのか, 接続詞のand / or はいったいどこに散りばめられているのか? 僕は大学時代に法学部でもなければ法律のほの字も知りませんが, ビジネスを進める上で必要となりましたので, 会社員になってから適応のため勉強しました。
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契約書を読む必要性
「使用規約に同意してください」・・読まずに同意, みたいなことは日常生活で多くあると思いますが, B2Bとなれば話は権利関係が複雑となり, 金額も大きくなるため読むことが求められます。十分に読み慣れたら, 次のステップとしては書くことも必要になってきます(書くことまでは僕はまだできません・・)。
英会話や英語による案内だけで大丈夫, という方は会話と敬語だけでよいでしょうが, 学ぶ量が少なくてできる仕事は他の人や機械に置き換えられてしまう可能性が高いです。
新しいiOSをダウンロードすると・・
https://www.apple.com/legal/sla/docs/iOS13_iPadOS13.pdf
ここに先日でたiOS 13の利用規約のリンク先を示します。読んでいてもつまらないですし, 必要性がなければ全てを読まなくても構いません。しかし, 会社に入って英語を使ってビジネスをしたい方には避けては通れない道となりますので, 目次や構成だけは眺めてください。見出しの順番であったり, 契約書でしかみかけない単語であったり, 大文字の独特な使い方があったりなど, これはこれで学べることが多いと思います。
ひとつめの文だけで7行を消費!主語と動詞は何?
1. General という一番初っ端の項目をまずはご覧ください。これ, 驚くなかれ, ひとつの文です。ピリオドが登場するまでpdfの文書で実に7行を消費しています・・・
(a) The software (including Boot ROM code, embedded software and third party software), documentation, interfaces, content, fonts and any data that came with your Device ("Original Apple Software"), as may be updated or replaced by feature enhancements, software updates or system restore software provided by Apple ("Apple Software Updates"), whether in read only memory, on any other media or in any other form (the Original Apple Software and Apple Software Updates are collectively referred to as the "Apple Software") are licensed, not sold, to you by Apple Inc. ("Apple") for use only under the terms of this License.
無駄に長い文章がたくさん登場するのが契約書独特の性格です。ここで必ず注目すべきなのはただひとつ。主語と動詞はなに???????
(a) The software (1including Boot ROM code, embedded software and third party software), documentation, interfaces, content, fonts and any data that came with your Device 2("Original Apple Software"), as may be updated or replaced by feature enhancements, software updates or system restore software provided by Apple ("Apple Software Updates"), 3whether in read only memory, on any other media or in any other form (4the Original Apple Software and Apple Software Updates are collectively referred to as the "Apple Software") are licensed, not sold, to you by Apple Inc. ("Apple") for use only under the terms of this 5License. Apple and its licensors retain their ownership...おー。
主語 = 赤色 The softwareうんちゃらかんちゃら
動詞 = 青色 are licensed, not sold to you
iPhone やiPadを購入してついてきたソフトウェアなどの無形資産に対してAppleは「あなたにライセンス(使用権)を与える, (所有権の移転を伴うような)販売をしてはいない」ってことをいいたいのですね。
(法律の専門家さんから見れば僕の日本語は正しい用語ではないかもしれませんが, わかりやすくするためである旨ご了承いただければと思います)こんな長い一文であれば, SVCだSVOOだといった文型について気にしていてもはじまりません。どんな文章でもSとVだけを探していただければいいです。
契約書のコピーをとって, ガシガシ線を引き, 主語と動詞だけぐるぐるマルで強調して, 余ったスペースに3行で要約や感想を書き足すことを繰り返していけば, 契約書への苦手意識はなくなるはず・・・です。
下線部を解説
and / or の手前にコンマは必要か? (下線部1,3)
including Boot ROM code, embedded software and third party software
whether in read only memory, on any other media or in any other form
A, B, and C または A, B and C
A, B, or C または A, B or C
3つ以上のことを並列で書く際に, and や or の手前にコンマを入れるかどうか? という議論がありますが, この文章では「なし」で統一されています。Oxfordのコンマと呼ばれるこれは「ある方がいい」「なくて大丈夫」という意見が二分されていて, 記法に一貫性を持たせることが大切とされています。詳しくはこちらへどうぞ。
契約書内の語句の定義(下線部2, 4)
下線部2: (以下「・・・」という。)
契約書内で大文字から始まる単語は, 契約書の中で定義された語句です。ここではOriginal Apple Software という語句が定義され, 契約書内で今後使う際には
Original Apple Software
= The software (including Boot ROM code, embedded software and third party software), documentation, interfaces, content, fonts and any data that came with your Device
の意味で使いますよ, という意味になります。
日本語の契約書で「(以下「・・・」という。)」というカッコ書きがありますが, 英語では(hereinafter referred to as "X・・") や単に("X・・")という表現が使われます。Xは大文字です。
契約書によっては定義された語句の辞書が契約書内にひっついていることがあります。
下線部4: Collectively referred to as
英語では単数と複数を分けますので, 単数・複数それぞれを別に定義することがあります。このとき複数を扱う際には"collectively referred to as ..." と書かれます。
下線部5: ピリオド後のスペースはひとつか, ふたつか
これも記法の論戦のようなものですが・・・
文が終わって, 次の文に移る際に開けるべきスペースはひとつか, ふたつか
という論戦が英語にはあります。タイプライター時代には当然のごとくピリオド後のスペースはふたつである必要がありましたが, Microsoft Word などのソフトが普及した時代以降はスペースひとつが主流となってきました(文間のスペースを自動でうまく調整してくれるようになったため)。スペースふたつという主張も誤りではなく, 確かにふたつ空いていると読みやすいという利点があります。一文が長すぎて文の切れ目を探すのが難しい契約書ではスペース2個が効果を発揮します。
なお上記Appleの同意書では現代のスタイルでスペースがひとつとなっており, 書面にわたってその記法が使われ続けています。
学校で習う初歩がすべてのはじまり
中学・高校の教室で習うような「主語と動詞はなに?」という概念を書きましたが, 社会人で英語を読み書きする立場になってからも非常に大切なことであることがおわかりいただけたでしょうか。
大学入試で契約書の読解を出すようなケースは見たことがありませんし, 大学入試に照準をあてて勉強されている学生さんには見向きもしてくれないとは思いますが, 大きな買い物から自分の個人情報を守ることまで, 実生活では非常に大切です。権利・義務関係が全て規定されていて, 署名をした瞬間から守らなければいけません。守らなければ material breach!! だといわれ, 契約を破棄, さらに契約書に定義された損害賠償を請求される可能性があります。
日本の企業と外資企業両方に勤めてみての感想ですが, 契約書の重さは外資企業の方が重い印象があります。
ぜひ, ひとつだけでも良いので契約書・同意書のたぐいを読んでみてください。英文読解の新たなページが開けるかもしれません。笑。
おもしろかった!と思っていただいた方, ぜひ読者になってください!よろしくお願いいたします。
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