1枠10億円とも20億円ともいわれるSuper Bowlの広告枠。各社のマーケティング戦略の最高峰。
せっかく午前休暇をとったので、試合だけではない熱気・雰囲気を4時間ぶっ通しで感じました。広告主たちはこんな感じでメッセージを発していましたよ!!アメリカのCMで知ることは, 数年後日本にも何らかの形でやってきます(そして規制というハードルに淘汰されることもしばしば)。
- Super Bowlの視聴方法に苦戦
- それにしてもコマーシャルがおもしろい!
- 自動車
- 投資関連・クリプト
- 有料動画配信サイト
- GAFAなどIT
- 通信: 5G
- 旅行
- B2C: 食べ物/外食産業/消費財
- ウェブサービス
- メディカルサービス・保険業
- スポーツ用品
- その他
Super Bowlの視聴方法に苦戦
毎年休暇をとってNHK BS1で楽しんでいるSuper Bowlですが、今年は冬季五輪と重なるためか、最近あまりにもひどいと感じる経費削減の波に押されたか、中継ばかりか再放送すらなされないと開催当日の朝になって気づきました。
あー。。休暇をとった意味が!!
BS1が使えないときは次の方法があることがわかりましたが
・DAZNの1ヶ月無料体験・・・1試合のために1ヶ月の権利を使うのか??
・VPNを契約して他国のネットストリーミングで・・・最近は中国にいかない・いけないのにVPNはいらないなあ
・ジータス・・・却下
・Amazon Prime・・・日本のAmazonは非対応
いろんな視聴方法を30分強検討した結果、
NFL公式の"Game Pass"を120円で購入 という最適解に至りました。
理由:
・英語で実況・解説が聞ける
・ハーフタイムショーもノーカットで見れる
・CMもNBCの現地映像がそのまま映る (Twitterで確認すると現地と同じ時間に放映されていることがわかりました)
それにしてもコマーシャルがおもしろい!
1枠10億円とも20億円ともいわれるSuper Bowlの広告枠・・価格は長さにも当然依るのでしょうが、たかだかコマーシャルと思っては大間違いです。同じ広告動画は2枠となかったです。同じ会社でもブランドを変え、品を変え、あの手この手でブランドを売り込む姿は画期的でした・・
CMのクオリティに感動したのは初っ端からでしたが、すべての広告主のメモをとれたわけではないですし、それぞれのCMを2回以上見たわけではないことにご注意いただきながら、順不同で、業種別にご紹介します。米国企業には$印の後にティッカーを表示します。
自動車
米・独・韓・中の自動車4社6枠のうち、5枠で電気・All-Electricをアピール。
GM ($GM)は3枠確保。
・GM「コーポレートメッセージ2025までに30のEV車種を展開」
・Chevrolet (ブランド)- Silverado(車種)にAll-electric登場
・GMC (ブランド) - Denali (車種)のみ「電気」の主張がありませんでした
BMW / KIAの両社は電気自動車としての企業イメージを全面展開
Polestar という電気自動車ブランドを展開するのは中国の吉利(Geely)
CMを深読みすると↓の意味が込められていたみたいですが、ぱっと見でわかるのは自動車の業界人くらいでしょうか・・・僕には意味不です。
日系自動車はToyotaとNissanがそれぞれ2枠使用, いずれも電気のメッセージは伝わってきませんでした。
Toyota
・Start Your Impossibleというメッセージとともに心を打つCMを展開。冒頭にはToyota Presentsの文字はなく、なんのCMやねん・・・?と最後の最後まで種明かしされない感じがうまいなあと思いました。
・もう1枠はTundra(車種)のCM
・Toyotaはハーフタイムレポートのネーミングライツも購入
Nissan
・Infinity(高級車種ブランド)で1枠
・Nissanのブランドで1枠
電気自動車だ、という人もありましたが僕にはそのメッセージは伝わってきませんでした。他国が電気電気と猛烈に騒いでいる中、日系の4枠だけが電気じゃなかったなあという印象だけ残りました。
・ Wallbox ($WBX) 電気自動車の充電器
投資関連・クリプト
どんだけクリプト業界儲かってるんや・・・と思わせるCoinbase ($COIN), FTX (大リーグの審判団の胸にかいてるあのロゴ), crypto.com...それにSocial InvestingのeToro
Super Bowlの会場となったSoFi StadiumはSocial Financeが由来ですし・・・なんだかこの業界は大変儲かってるんだなという匂いだけがしてきます。唯一クリプトの匂いがしなかったのがMorgan Stanley ($MS)が買収したE-Trade. 長く続いた低金利で順風満帆なのでしょうね!
踊るQRコード
もっとも印象に残ったCMはCoinbase ($COIN)
何十億円の広告枠にQRコードを1分近く踊らせ、視聴者はスキャンする以外にアクションを取れない状態にされました。最後はエラーメッセージ的な雑音で終わる、画期的な広告。。。
当然、回線はパンクしたとか! twitterにはいろんな反響が寄せられています。
有料動画配信サイト
有料動画サイトの業界はもはや飽和しています。最後の力を振り絞りながら、番宣で客を一人でも多く呼び込んでいるようにみえました。
・中継を行った張本人であるNBC($CMCS)が推すPeacockは当然、自社番組の広告枠で連呼、連呼。
・日本でも有名なAmazon Prime Video ($AMZN), Netflix ($NFLX), Disney+ ($DIS) はもちろんのこと,
・Google ($GOOG)のYouTube TV
・現行$T - 新Warner Discovery ($WBD)のHBO max
・CBS ($VIAC)の Showtime
・映画館ではないAMC ($AMCX)のAMC+
多数が入り乱れていました。どれだけ顧客の獲得競争激しいんだ・・・!!
GAFAなどIT
・Google($GOOG): Pixel 6のカメラ付きケータイ
・Samsung Galaxy: こちらも何やらケータイ。SamsungはPostgameのネーミングライツも購入
・Meta Platforms ($FB): Meta Quest 2 メタバースの中で昔のおともだちを見つけよう
・Salesforce ($CRM): 開拓すべきはメタや宇宙などではなく、地球そのものだ。#TeamEarth
このCMはどう深読みすればいいのだろう??metaとかどうでもいいというメッセージか。
・aws (CMはなく, 試合途中のコーナーのネーミングライツのみの登場)
・Alexa (awsとともに$AMZNの社名は使わず, ブランド名だけで勝負) Alexaに普段の会話を聞かれつつ、Alexaが心を先読みしすぎてしまうという内容
・楽天、ECプラットフォームとして。ラキュテンで買えばキャッシュバック・・
通信: 5G
Verizon($VZ), T-Mobile ($TMUS), AT&T ($T)
大手3社のうち$Tを除く2社が数枠ずつ登場。$Tは全く印象に残らなかったが1枠あったらしい。
$TMUSは特に5Gネットワークの素晴らしさを説き, "Rescue your phone from AT&T"などと言って競合から乗り換えるように仕向けていた。プレーヤーの少ないオリゴポリーだからこそ, CMは泥仕合のようなものになるのか・・・
旅行
そろそろ回復するか、旅行需要?
Expedia ($EXPE), booking.com (オランダ), Turkish Airlines (何の目的!?)
やはりIT的なところでないと広告を出せる体力はないか。そんな中, 旅行業界で実際のオペレーションをする企業としてはトルコ航空だけが健闘。
B2C: 食べ物/外食産業/消費財
食品企業はブランドを複数持ち、それぞれのターゲットに訴求しないといけないので広告費がたくさんかかるのですね・・・B2C企業ならではの高コスト体質です。コカコーラ($KO)はSuper Bowlに対して一切ノータッチのようでした。
それにしても食品は酒とつまみばかりだ!
・PepsiCo ($PEP)はハーフタイムショーのネーミングライツを(めっちゃ高そう)。
Pepsi, Mountain Dew, Lay's, Doritosなどの食品を全部登場させたもので1枠。
そしてさらにDoritos, Lay'sのブランドでそれぞれ1枠ずつ。
・Budweiser, Bud Light, Michelob Ultra, Cutwater Spirits などのブランドを持つAnheuser-Busch ($BUD, ベルギー)
・Yum Brands ($YUM)のPizza HutとTaco Bellのブランドでそれぞれ1枠ずつ。KFCではなく、ピザとタコスを広告にすることを選ぶのですね。。何か理由があるのかもしれない。
・UberEatsのブランドを持つ$UBER がお届けするものは「食品に限らず」と大きく主張したCMはインパクト大でした。
・Avocados from Mexico は読んで字のごとくなのですが, 運営者は誰なのでしょう・・メキシコの国を挙げた宣伝なのか、メキシコ企業の名前なのでしょうか。調べてもよくわかりませんでした。数億円かけて、アボカドだけの宣伝って。そんな!!ちゃんと元が取れるのでしょうか!!
・Pringlesのブランドを持つのはP&Gではなく, Kellogg's ($K)で1枠だけの登場。あらゆるブランドの中でSuper Bowlと相性の良いのはやはりポテトチップスなのか。コーンフレークはやっぱり朝のボーッとしているときだから食べられるんやな!!おかんが言うには!
・P&G ($PG)は何もしていないかというとそうではなく, Gillette のヒゲ剃りで1枠に登場。これこそ朝に使うものではないのか!!フットボール見ながらヒゲ剃りの広告を見て, 買おうと思うのだろうか。それともP&Gが2012年に売却したPringlesブランドにスーパーボウルの広告権数十年分みたいなのがついていたのだろうか・・・。複数ブランドを持つ両者にも関わらず1枠ずつの登場。原価高が続く中、高コストを嫌気したか?
・Planters は有名なナッツのブランド。所有しているのはHormel Foods ($HRL)という米国企業。ミックスナッツはひとつずつ種類ごとに食べる派か, まとめてガブっと食べる派か, あなたはどっち?と尋ね, CMにちなみ, #PlantersAllorOne というタグを流行らせようと頑張っている。・・・別にどちらでも良いが, 僕はまとめてガブっと派ですかね!
・Unilever ($UL)の持つHellmann'sというマヨネーズのブランドでMake Taste, Not Waste 「その食べ物捨てる前に、マヨネーズで味付けして」
・OikosはDanone (フランス)ヨーグルトのブランド。
・Colgate-Palmotive ($CL)の石鹼/ボディーソープ Irish Spring
ウェブサービス
いわゆるDXというやつでしょうか。DXというバズワードは一つも出てこなかったですが、今までやってきたことを新しいサービスで簡単にできるようにしよう、という流れの企業が数社。
確定申告(tax return)の時期ですので税金計算のお手伝いは適時な広告になります。
米国では全員が確定申告する必要があります。
・Intuit ($INTU)という企業のTurboTax というサービスブランド
・H&R Block ($HRB)
これら2社は競合関係にあるみたいです。
・Greenlight (Atlantaベース, 非上場) お金の管理(personal finance)に関する教育。子ども・学生向けのデビットカード発行, 教育用アプリ開発業
・Vroom ($VRM) 自動車のECサイトです。日本ではハードル高そう・・
・Carvana ($CVNA) 同じく自動車(中古車)のECサイトです。オンラインで売買できると効率が大変良さそうですね!販売予定の車を店頭に飾る必要もないですから・・
・Ring はホームセキュリティの会社です。スマホで自宅の様子がすぐわかるので安心。どこが親会社なのかと思ってみてみたら$AMZNでした。Amazonは自社のブランドでCM展開するのが好きですね・・知らない人がいないもんなあ
・BMC (非上場, ファンドの$KKRが親会社)
このスピードの速いagileな世の中において, 企業は "Autonomous Digital Enterprise" になるべきだ、そのお手伝いをすると宣伝してました。もう!何のこっちゃ!!歳をとるにつれ, 徐々に宣伝しているものがわからなくなる現象が, この年にして始まってきましたよ!!
・Squarespace ($SQSP) はSaaS企業です。ウェブサイトを簡単に作れるサービスを提供。CM自体はSから始まる単語を多用して耳に残る工夫が・・・
メディカルサービス・保険業
・Cue Health ($HLTH) おうちで簡単にCOVID検査ができる・・・僕が書くより動画で一目瞭然です。
・Opdivo + Yervoy (Bristol Myers Squibb ($BMY)による処方薬の組み合わせのCM)
「NSCLCというタイプの肺癌にかかっている患者で、化学療法が嫌だという方はこれの処方を担当医に進言してください」
試合終了直後のCMもカウントして良いのだろうか・・・しかしまあ処方薬のCMを大衆に向けて発信するところがアメリカらしい。
スポーツ用品
・Wilson ブランドは有名でも所有しているのはフィンランド企業のAmer Sports, そしてその企業を所有しているのは中国企業のAnta Sports
Wilson, Salomon, Atomic, Louisville Sluggerといった西洋系ブランドは今や中国企業の傘下にあるのですね・・!
・Under Armour ($UAA) こちらはれっきとした米国企業です。
その他
・小売店:Sam's Club = Walmart ($WMT)のCostco的店舗ブランド。ケータイでバーコードを撮影しながら買い物(決済)するスタイルを提案。うちだと長いチェックアウトの列に並ばなくても良いよね、というのは現金至上主義なCostcoに対する宣戦布告だろうか。
良いですよね、こういうスタイルの買い物。
・スポーツ賭博:DraftKings($DKNG)
いろいろと書いてきましたが, 米国経済を勉強する上ではとても濃密な4時間でした。日本勢からはToyota / Nissan / Rakutenの3社でした。
皆さんもぜひみてみてください!投資をされる方は, 自己責任でお願いいたします。
下記のサイトに動画がまとまってはいます。しかしながら僕の書いたメモと必ずしも一致していませんでした。ご参考まで!!